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「愛、アムール」あらすじと感想。

愛、アムール

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キャナル・プリュスとレ・フィルム・ロサンジュ社によって、2012年に合同製作されているヒューマンドラマ。

本国フランスで先行上映された後に、日本でもロングライド社の配給によって2013年の3月9日から劇場公開されています。

別荘での優雅なバカンスが恐るべき一夜へと豹変する「ファニー・ゲーム」や、お堅い音楽教師が教え子との倒錯した関係に溺れていく「ピアニスト」など、異色サスペンスから大人のラブストーリーまで幅広く手掛けている、ベテランの映画作家がメガホンを取っています。

ミヒャエル・ハネケ監督が書き下ろした127分の脚本を、オーストリア・フランス・ドイツの3カ国から融資を取り付けて完成に漕ぎ着けました。

第65回カンヌ国際映画祭ではパルムドールを獲得した他、2013年度のアカデミー賞における外国語映画賞の受賞作です。

病に倒れた妻と彼女を献身的に介護する夫との、残された日々を淡々と綴っていく感動作に仕上がっています。

目次

「愛、アムール」あらすじ

アンヌは1980年代に活躍したピアノ教師で、退職してからは夫のジョルジュとパリのアパートメントで暮らしていました。

元生徒のアレクサンドルの演奏会を観劇したある日の夜、自宅に何者かが侵入したようでカギが壊されてしまいます。

次の日の朝にジョルジュが業者に修理を依頼しようとしていたところ、アンヌは身体が硬直して呼び掛けにも応じません。

エマ
病院へと緊急搬送されたアンヌは脳卒中と診断されて手術を受けますが、全身には重い麻痺が残り、介護が必要です。

娘のエヴァやヘルパーたちはアンヌを施設に入院させるよう説得を試みますが、ジョルジュは頑なに聞き入れません。

少しずつ認知症の兆候が現れて生きる気力を失くしていくアンヌを、ジョルジュはただひたすらに支え続けていくのでした。

「愛、アムール」キャスト紹介

ジャン・ルイ・トランティニャン

ジャン・ルイ・トランティニャン

過酷な老々介護へとたった独りで立ち向かっていく、主人公のジョルジュ役はジャン・ルイ・トランティニャンです。

ブリジット・バルドーとの共演を果たした「素敵な悪女」や、ヴァレリオ・ズルリーニ監督によって見出だされた「激しい季節」など、モノクロフィルムが主流だった1950年代から、数多くの青春映画でその名を馳せたフランスを代表する名優ですね。

本作品では年齢を重ねることによって増していく魅力と、未だに衰えることのない演技への情熱を存分に発揮していました。

エマニュエル・リヴァ

エマニュエル・リヴァ

死すべき運命にも抗うことなく全てを受け入れていく、アンヌの役に抜擢されているのはエマニュエル・リヴァです。

若き日には広島を舞台にした「二十四時間の情事」に出演した女優さんで、オールド・ファンには懐かしいのではないでしょうか。

イザベル・ユペール

イザベル・ユペール

夫婦の娘・エヴァ役にはハネケ作品の常連であるイザベル・ユペールが起用されていて、しっかりと脇を固めています。

「愛、アムール」音楽について

国際的なピアニストとして名を馳せているアレクサンドル・タローが、本作品のサウンドトラックを手掛けました。

ドビュッシーの追悼記念パフォーマンスでは、コンテンポラリー・ダンサーのヨアン・ブルジョワと「月の光」を演出。

製作に20年の歳月を費やした「Barbara, Erato」では、シャンソン歌手・バルバラのヒット曲全26曲をコンプリート。

名門オーケストラとの共演や華々しいリサイタルだけでなく、その活動の場はクラシックに止まることはありません。

映画冒頭のコンサートシーンでは、数々のピアノコンクールで入賞した卓越した演奏の腕前を披露していきます。

シューベルトからベートーベンにショパンまでと、名曲アルバムの世界へと誘われていくかのような気分ですよ。

劇中ではアンヌの愛弟子・アレクサンドル役として俳優デビューまで果たしてしまうなど、有り余る非凡な才能に驚かされます。

「愛、アムール」感想

全編を通してほぼ夫婦のアパート内に舞台が限定されていますが、ときおり外の風景を垣間見ることができました。

かつての教え子・アレクサンドルが今まさに立とうとしている晴れ舞台は、クラシックの聖地・シャンゼリゼ劇場です。

ジョー・ダッサンの「オー・シャンゼリゼ」で有名な、コンコルド広場から凱旋門へと続くシャンゼリゼ通りとは関係ありません。

パリ8区のモンテーニュ通りに聳え立つ白亜造りの外壁が特徴的な、1910年代前半のアール・デコを代表する建造物です。

歴史の奥深さを感じることが出来る館内でも、開演間際に流れる「携帯電話の電源をお切りください」というアナウンスに時代を感じますね。

映画の後半には体が不自由になったアンヌに寄り添いながら、ジョルジュは幼い頃にキャンプで出掛けたオーヴェルニュの思い出を語るシーンがあります。

フランス南部の山岳地帯や湖の畔に佇む古城の美しさが、ベッドの上から起き上がることができないアンヌにとっての慰めとなるはずです。

エマ
前日まではクラシック・コンサートを楽しんで生き生きとしていたアンヌの、朝食のテーブルでの無表情が気になります。

いつものようにジョルジュが茹で卵にトッピングする塩の瓶を持ってくるよう頼んでも、まるっきり反応がありません。

[moveline color=”#afeeee” sec=”5″ thick=”40″ away=”2″]些細な違和感や兆候さえ見逃すことがなかったところには、[move]長年に渡って連れ添った夫婦にしかない以心伝心[/move]を感じました。[/moveline]

入退院を繰り返し闘病生活が長引いていく中でも、如何にして変わらない夫婦の絆を守り抜くのか考えさせられます。

訪問ヘルパーの利用は週3回程度に抑えて、2週間に1度だけやって来る医師と美容師の他には頼れそうな行政サービスにありません。

残り全ての時間をたった独りでアンヌの身の回りの世話をする、ジョルジュの並々ならぬ覚悟と決意が伝わってきます。

ジョルジュとエヴァ

その一方では世の中との関わりを一切断ち切ってしまい、孤立無援状態となっていくような危うさと心細さもありました。

[moveline color=”#afeeee” sec=”5″ thick=”40″ away=”2″]遠く離れた場所に住んでいる娘のエヴァよりも、[move]階下に常駐しているアパートの管理人の方がアンヌたちのことを把握しているのが皮肉[/move]です。[/moveline]

いつの間にやらアパートの中に飛び込んできて我が物顔で動き回る、1羽の大きな鳩から不吉な予感が高まっていきます。

完全に寝たきり状態であるはずのアンヌが、何事もなかったかのようにピアノを弾いている姿にも惑わされました。

遂にはジョルジュ自身が精神的なバランスを崩していく中で、現実と妄想が激しく入り乱れていくようでスリリングです。

愛するアンヌからの最後のお願いを突き付けられたジョルジュが、悩み追い詰められた末に下した決断が衝撃的でした。

まとめ

もぬけの殻となった夫婦の寝室の入り口で、ようやく駆け付けたアンヌが立ち尽くすクライマックスが忘れ難いです。

看護師による患者への虐待問題に代表されるような、福祉が充実していて寛容なイメージが強いヨーロッパの裏の顔も描かれていました。

[moveline color=”#afeeee” sec=”5″ thick=”40″ away=”2″][move]普段から緩やかな人と人との繋がりを保ちながら、いざというときには無理なく手を差し伸べることができる地域コミュニティの大切さについて痛感[/move]させられます。[/moveline]

介護の現場で働いている方たちや、医療関係の仕事に興味がある皆さんは是非ともこの作品をご覧になってください。

愛、アムール

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