TCエンタテイメントとスクラムトライ社の製作。
2014年の4月12日〜函館シネマアイリスで先行上映後、4月19日〜東京テアトルの配給で全国ロードショーされました。
メガホンを取ったのは、呉美保監督
小説家やCMディレクターとしても活躍。
1977年生まれで三重県伊賀市出身の映画作家です。
代表作品
- 突然の母親の結婚宣言に振り回される娘の困惑をユーモラスに綴った「オカンの嫁入り」
- ネグレクトや学級崩壊をはじめとする子供を取り巻く様々な問題をテーマにした「きみはいい子」
今作「そこのみにて光輝く」は、1982年3月に河出書房新社から刊行の第2回三島由紀夫賞候補作を基にしてオリジナルシナリオを書き下ろしました。
第38回のモントリオール国際映画祭では最優秀監督賞を獲得した他、2014年度のキネマ旬報ベスト・テンでも日本映画部門の第1位にランクイン。
30年以上前に41歳で亡くなった悲運の天才小説家・佐藤泰志が、生前に残した唯一の長編小説を現代に甦らせたヒューマンドラマです。
「そこのみにて光輝く」あらすじ
佐藤達夫は鉱山で火薬を扱う危険な仕事についていましたが、同僚が爆発に巻き込まれて亡くなってのがショックで突発的に退職してします。
北海道函館市内のアパートで一人で暮らし、ブラブラする毎日
散歩したりお酒を飲みに行ったりとこれといった目的もなく気ままに過ごしています。
大城拓児との出会いと大城家の貧困生活
いつものように昼間から近所のパチンコ店で時間つぶしをしている時に、初対面とは思えないほど人懐っこく話しかけてきたのが年下の青年・大城拓児です。
刑務所から出てきたばかりの拓児の行く末を心配している母親のかずこ、脳梗塞の後遺症で1日中布団の中にいてほとんど意識がない父・泰治、家族を養うために不特定多数の男たちの間を渡り歩いている姉・千夏。
大城一家の4人は海辺に佇む粗末なバラック小屋を住居にして、貧困に耐えながら何とか日々の生活を凌いでいるようです。
過酷な毎日を生きながらも決して純真さと優しさを失うことのない千夏に、佐藤は少しずつ心惹かれていきます。
すべてを諦めかけていた佐藤も、もう1度自分自身の人生と向き合っていくのでした。
「そこのみにて光輝く」キャスト
主人公の佐藤達夫… 綾野剛
昼過ぎに目覚めてノロノロと着替え、近所をブラブラと散歩した後でパチンコ店でひと休み、夜は居酒屋で一杯ひっかけて日付けが変わる頃に帰宅。
ルーティンワークのごとく怠惰な日課を繰り返している、何ともだらしのない主人公・佐藤達夫の役を演じているのは綾野剛です。
ヒロインの大城千夏…池脇千鶴
美しくも何処か儚げなシルエットが北海道の浜辺に似合う、ヒロインの大城千夏には池脇千鶴が扮していました。
田辺聖子の「ジョゼと虎と魚たち」や伊藤たかみの「指輪をはめたい」など、これまでにもベストセラーや人気小説の実写化には重宝されてきただけに今作での抜擢はズバリ的中ですね。
千夏の弟・大城拓児…菅田将暉
菅田将暉が演じているのは千夏の弟・大城拓児で、家族を愛する余りに破滅的な道のりを歩んでいく役どころであり物語のキーパーソンでもあります。
脇はベテランでしっかり固める
出所後の拓児に仕事を紹介する強面の男・中島役の高橋和也、かつての部下を今でも心配している面倒見の良い上司・松本役の火野正平。
主役の3人には人気の俳優たちを起用しつつ、脇役は渋めのベテランの役者さんでしっかりと固めていました。
感想
オープニングの舞台となる騒がしい電子音や大音響の有線放送が流れるパチンコ屋の店内と、静まり返った町外れのバラックとのコントラストが際立っていました。
そんな彼女がひとときだけの安らぎを求めるかのように、佐藤達夫とふたりで抱きあったまま海に飛び込むシーンは鮮烈に焼き付きますよ。
【再出発】新しい生活を始める3人に勇気をもらえる
拓児は昔の悪い仲間と縁を切るために佐藤とふたりで鉱山会社に就職。
夜の仕事から足を洗った千夏も、海産物を缶詰に加工する工場で再出発。
孤独を受け流すように生きてきたひとりの男と理不尽な社会のシステムに支配されていた姉と弟が、力を合わせて現実に立ち向かっていく姿には勇気を貰えました。
やがて佐藤と千夏は結婚を決意し、義理の弟となる拓児も交えていきつけの食堂で3人でささやかな祝杯を上げる場面も微笑ましかったです。
ようやく明るい未来をつかみ始めていた3人だが…
彼らの前に立ちはだかる、この街の有力者・中島は見るからに暴力的な雰囲気を漂わせています。
鉱山への出発の日が刻一刻と近づくにつれて、異様なほど気持ちの高ぶりが抑えられない様子の拓児が印象的でした。
佐藤の先輩・松本は事故に巻き込まれて片方の目を失ったほどで、憧れだけでは務まらない山の厳しさも伝わってきます。
せっかく工場での勤務に慣れてきた千夏に未だに未練たらたらで、しつこく付きまとう松本が見苦しいですね。
屋台に並んだカラフルでふわふわの綿あめに、地元の人たちや遠方からの観光客で人だかりができる香ばしい焼き鳥。
普段であればお祭り気分を盛り上げる美味しそうな夜店の風物詩も、この時ばかりは鋭く尖った鉄串が忌まわしい感じでした。
「そこのみにて光輝く」Twitterの口コミレビュー
#映画あいうえお#そから始まる映画といえば
2000年以降の作品しばり『そこのみにて光輝く』
函館の街で地を這うように生きる人々。キツイ。でもそこらへんにあるかもしれない物語。リアル。綾野剛、池脇千鶴、菅田将暉。三人ともホントいいんだよね。ときに光輝くように美しい。 pic.twitter.com/J97fGhDofs— edie (@its_bluemoon) May 29, 2020
そこのみにて光輝く 映画が好きで何度も観てる…閉鎖的で薄暗くて、そこから抜け出そうとしても邪魔が入って諦めちゃうのがつらい この作品の綾野剛と池脇千鶴エロいので何度も見たい
— とうみん🐻🌲🍂 (@toumin_sleepy) May 27, 2020
呉美保監督は『そこのみにて光輝く』の監督。つらい現実世界の切り取り方が素晴らしい。そこのみにてに出演されていた池脇千鶴さんと高橋和也さんは裏設定で夫婦だそうだ。この作品ではそれぞれ少なくとも一人救えるかもしれない人がいる。誰かにとって誰かが苦しみから救い出される光となりますように
— おっくん (@masacokun) May 24, 2020
『そこのみにて光輝く』
ラストシーンに差す光、からタイトルで「つぁー!」と奇声を発しそうになった。美しすぎて良すぎて。ジメジメしたどん底で、連鎖する負に押しつぶされながらも、一瞬に大丈夫を受け取る。これが映画だ。池脇千鶴の言語化不能な表情が凄い。
『きみの鳥はうたえる』に並ぶ好き。 pic.twitter.com/k5dDMbqbUQ— るそん。 (@Lecon_3606) May 19, 2020
まとめ
夜が明けて微かに朝陽が射し込み始めた思い出の砂浜で、物語は無情にもクライマックスを迎えることになります。
あまりも残酷な結末にも、2人の間に築き上げてきた濃密な時間に僅かな救いを噛み締めることができるでしょう。
2010年「海炭市叙景」、2016年「オーバー・フェンス」、2018年「きみの鳥はうたえる」、ここ数年で立て続けに遺作が映画化されている佐藤泰志ですが、生前は芥川賞に5回落選した不遇なキャリアの持ち主。
[moveline color=”#afeeee” sec=”5″ thick=”40″ away=”2″]本作品で映し出されている[move]短くも眩しい函館の夏を、夭折の作家の生きざまに重ね合わせて[/move]しまいました。[/moveline]
文芸作品の映像化や純文学に造詣の深い方はもちろん、それ以外の方にもこの作品をみてほしいですね^^
「そこのみにて光輝く」を無料で観るには?
まずは31日間無料トライアルでお試ししてみてくださいね^^
本ページの情報は2020年6月時点のものです。
最新の配信状況は U-NEXT サイトにてご確認ください。
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