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フェデリコ・フェリーニ監督の傑作「道」の感想

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道

これを初めて観たのは学生時代。

紀田順一郎氏の『図書館活用百科』に載っていた東京国立近代美術館フィルムセンターに関する文章で「道」を知り、ビデオ(当時はDVDなんてなかったんですww)を買って観ました。

目次

「道」はわたしの価値観をひっくり返されるほどの傑作だった

それまでの映画観が全てひっくり返るほどの衝撃を受け、映画とは単なる娯楽ではなく、芸術であることを実感しました。

そのため、『ぴあ』を買ってミニシアターでエジソンやリュミエール兄弟などの作品から観に行くようになり、新聞のTV欄で古典的な名画を見つけると行ったり、文芸座などの名画座でアンドレイ・タルコフスキーの作品を観たりしました。

それまでは、映画というのは、ただ単に面白おかしく作られているだけだと思っていましたが、その不明を恥じたくなりました。

「道」は1950年代半ばに撮られました。
アカデミー賞の外国映画賞を受賞しています。

「道」あらすじ

旅芸人のザンパノとともに旅回りをするようになった主人公ジェルソミーナは、途中でザンパノが別の知り合い芸人を殺害したために、彼と別れました。

数年後、出所して再び旅回りをするようになったザンパノが或る街を訪れた際にジェルソミーナが数年前に亡くなっていたことを知り、海浜でさめざめと泣くという筋です。

「道」のキャストと監督について

ジュリエッタ・マシーナ

ジェルソミーナを演じたのはフェリーニの妻であるジュリエッタ・マシーナ。
ザンパノを演じたのはメキシコ出身の名優、アンソニー・クインでした。

フェリーニは戦後イタリアを代表する映画監督で、1993年に亡くなった際には国葬となった方です。

わたしが「道」に強く心惹かれたワケ

俳優陣の優れた演技とラストシーン

ジェルソミーナの哀切な気持ちに感情移入したために、ジュリエッタの演技に深い感動を覚えたことと、ザンパノが泣く最後のシーンで、荒くれ男も自分の所業に反省の気持ちを抱いたことに関して何とも言えない感情を抱いたためでした。

哀切に満ちた素晴らしい音楽

この作品は、さらに使われている音楽が非常に優れていて、フィギュアスケートの高橋大輔選手が、かつて「ジェルソミーナ」というこの映画の中の音楽を使ったことがあります。

哀切極まりない音楽で、わたしは古今の映画音楽のなかで最上のものと考えています。

フェリーニの映画は70年代後半まで、ニーノ・ロータが作曲しました。

彼が亡くなった後、フェリーニは別な作曲家と組むようになりました。
そこでフェリーニの映画は少し変質しましたが、それはそれでなかなかよいと思います。

カトリックの深い伝統が流れている

近年Blu-rayディスクを買って数十年ぶりに見直してみて理解できました。

それはカトリックに受洗した後のことだったために、分かったのかもしれません。

笑いと涙が上手く融合されている

エマ
こう聞くと単なるセンチメンタリズムの作品かと思われるかもしれませんが、そうではありません。

笑いと涙がうまく複合された映画なのです。

ザンパノの野蛮なところは、観客の笑いを誘います。

それに対して、ジェルソミーナは純粋で無垢の象徴のようにみえます。それが後半の悲劇を予感させます。

この映画ほどわたしが好きな作品はありません。
初めて観た際には、他のことは何も考えられなくなるほどでした。

当時のイタリアの時代背景を垣間見れて興味深い

道

また、この作品を観て初めてイタリア語を勉強してみたいと思うようになり、それから15年以上経ってイタリア語を学びました。

[moveline color=”#afeeee” sec=”5″ thick=”40″ away=”2″][move]この作品をフェリーニが撮ったころは、イタリアも日本同様、戦敗国として貧困がまだ目立っていた[/move]ようで、そのあたりが映画のなかで結構出てきます。[/moveline]

その辺も今見ると興味深いと言えるでしょう。

この作品から5年ほどしてフェリーニは「甘い生活」という名画を撮り、イタリアの繁栄ぶりを活写しました。

両方見比べてみるのも面白いですね。

表情で魅せる役者たち

ジュリエッタ・マシーナはフェリーニの他の作品にも結構出ていて、いずれも表情で見事な演技を披露しています。

映画の演技というのは演劇とは異なり、表情でするものだと思います。
それが最もよくわかるのがジュリエッタ・マシーナの演技です。

晩年に近い時期に彼女が出たフェリーニの傑作「ジンジャーとフレッド」では、表情だけでベテラン芸人の心情が巧みに表されています。

「ジンジャーとフレッド」で共演している名優、マルチェロ・マストロヤンニも同様の演技を披露しています。

「道」はモノクロ映画なので、明暗が強調された感じになっているため、そのあたりに登場人物の心情がうまく投影されています。

特に暗さが目立つ映画なので、その辺もわたしが引き込まれた理由です。

「道」こそが最もわたしに影響を与えた映画

この映画を観てすぐに、フェリーニより少し年上の著名な映画監督であるローベルト・ロッセリーニの「無防備都市」という名画も観賞。

その際にも深い感動を覚えましたが、わたしに及ぼした影響という点で語るならば、「道」と同じくらいです。

ただ1本に絞るとなると、やはり「道」になるでしょうか。

近年、この作品の展開を頭に思い浮かべて、ヴァイオリンの曲を弾いたことがあります。

この作品を使って曲を表現したわけですが、うまくハマりました。
情緒がハッキリしている点がハマった理由だと思います。

何度見ても感動できる映画というのはそれほど多くはありませんが、この作品は数少ない例外ですね。

映画は光と影の芸術

昔からよくそのように言われますが、この作品などはまさしくそう言えるでしょう。

神の存在もその明暗のなかに象徴的なものとして描かれているように思います。

映画の印象的なシーン|夜に行われた教会の壮麗なパレード

そのシーンでは巨大な十字架や聖母マリア像が出てきます。
最初に観た際に強烈な印象を受けました。

エマ
カトリックに受洗した後に見直して改めて感動しました。
このあたりにフェリーニのメッセージが込められていると思います。

暗い色調の作品ですが、このシーンには向日的なものが感じられます。

カトリックは基本的に楽天的な宗教なので、その明るさが明示されているようです。

まとめ

近年もイタリア映画は良い作品が多いようです。

現代とは異なり、この時期の作品には社会の現実をリアルに見つめたものが多く、ネオレアリズモと総称されています。

しかし私見ではこの作品はネオレアリズモを超えた映画だと思います。

フェリーニの作品は決して通俗的ではありませんが、タルコフスキーの映画ほど難解ではなく、どこか楽しくて、わかりやすいところがありますね。

その辺が彼の作品の魅力です。

 

道

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