映画の楽しさ、と一言でいっても色々です。
最近では、
- 日常では体験できない冒険気分が味わえるスペクタクルやアクション
- ドキドキして時間が経つのを忘れてしまうスリラー
- 思わず目を背けたくなる怖さに満ちたホラー
といったものが商業的に主流となりました。
近年大ヒットする映画、特にアメリカ映画はこれら3つのジャンルに分類される作品がほとんどでしょう。
ドラマ性の強い映画が豊富に制作されたハリウッド黄金期
ただ以前のアメリカ映画、特に30年代から50年代にかけてのハリウッド黄金期には、もっとドラマ性の強い作品が数多く制作され、高い評価を受けていました。
『サンセット大通り』の概要
1950年に公開された『サンセット大通り』もそんなドラマ性の強い作品の1つです。
監督はビリー・ワイルダー
彼は、アカデミー賞を作品賞、監督賞とりまぜて6回も受賞し、この時代を代表する巨匠でした(この『サンセット大通り』でも脚本賞を受賞しています)。
特徴は、何と言っても徹底的に練られた脚本による話術の上手さ
特に小道具の使い方や伏線の張り方、それに固有名詞がポンポン飛び出すセリフの生きの良さは他の追随を許さないものがありました。
後年は『お熱いのがお好き』や『アパートの鍵貸します』などでコメディ専門となりますが、1940年代から1950年代にかけては深刻な題材を扱ったシリアスな秀作傑作を数多く生み出しています。
この映画もストーリーはかなり重々しく、ラストも明るいとはとても言えません。
普通ならそんな話はいかにも退屈そうで、あまり積極的に鑑賞しようという気になれないものです。
でも映画の名人であるワイルダーは得意とする話術を発揮して、重厚でありながら面白さも抜群のドラマを作り上げました。
『サンセット大通り』のあらすじ
冒頭いきなり男が銃で撃たれ、プールに死体となって浮かぶ場面から始まります。
これだけでも意表を突かれますが、ワイルダーはこの死体が語り手となって過去を回想していくという、さらに斬新な手法を使っています。
男は売れない映画の脚本家
借金がかさみ、取り立て人を避けて逃げ回っているうちに大きな邸宅に迷い込みます。
ある中年女性が執事とともに暮らしていた。
その邸宅に住んでいた彼女は、サイレント映画の名女優。
とっくに人気がなくなっていましたが、自分ではまだまだ大スターだと思いこんでおり、カムバック作となるべき映画の脚本を自分でコツコツと書いています。
逃げ込んだ男が脚本家だと知ると、彼女は彼からのアドバイスを求めます。
これは金のない男にとっても幸いで、彼はその邸宅に寝泊まりしながら、脚本の書き直しを手伝うことになるのです。
いつしか女優の方では男を愛するようになるものの…
男はスタジオに行った際に若い女性脚本家と相思相愛となります。
彼は彼女と新しい生活を始めるために邸宅を離れることを決意するものの、男に執着した女優はそれを許しません……。
『サンセット大通り』は、ハリウッドの内幕話。
しかも主演を務めた女優のグロリア・スワンソンは本当にサイレント映画時代の大スターでした。
映画と現実が二重写しになるように、わざと彼女をキャスティングし、リアリティを高めています。
また執事を演じたのも、かつての名監督だったエリッヒ・フォン・シュトロハイムですし、やはり有名な映画監督であるセシル・B・デミルも本人役で出てきます。
過酷な競争社会であるハリウッドを描く
華やかではあるものの生き馬の目を抜く競争社会であるハリウッド。
その厳しさと残酷さをここまで趣向を凝らして描いた映画はそれまでありませんでした。
ワイルダーはこの頃アル中の悲惨な実態を描いた『失われた週末』、保険勧誘員が殺人を犯す『深夜の告白』など、甘い作品中心のハリウッドでは異例といえるような映画を連発していました。
そんな作品群の中でも特にこの『サンセット大通り』は狂気の域に達した映画女優を描いて、ほとんどホラーともいえるような恐ろしさを感じさせます。
といってもそれは最近の映画によくあるような観客をビックリさせて悦に入る安っぽい仕掛けではありません。
ストーリー、登場人物の心理、映像効果が三位一体となった、非常に高度な映画表現です。
まとめ
これほどの作品が映画工場と呼ばれていた往年のハリウッドで作られていたところに、アメリカ映画の奥深さを感じます。
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本ページの情報は2022年11月時点のものです。
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