『借りぐらしのアリエッティ』は2010年7月公開、米林宏昌初監督作品でした。
メアリー・ノートン『床下の小人たち』が原作です。
公開当時米林監督は37歳で、プロデューサーの鈴木敏夫氏は以下の見解を示しています。(産経デジタルより)
「(本作自体は宮崎駿氏が若いころに構想したものであるため)若いときに考えていたものを、彼(米田氏)に提供するのが一つの役割なんじゃないか」
『借りぐらしのアリエッティ』あらすじ
アリエッティは田舎の古い屋敷の床下に家族と暮らす小人
小人一家は、家主である68歳の貞子と63歳の使用人ハルに姿を見てみられないよう注意を払って、少しずつ屋敷のものを借りる、借りぐらしを営んでいました。
翔という人間の少年がやってた
心臓の弱い彼は手術の日まで田舎で療養するため、しばらく屋敷に住むことになったのです。
今まで地上へ借り物に出てないアリエッティでしすが、14歳になって初めて借り物をすることになります。
翔に見つかってしまったアリエッティ
なんとか角砂糖を持ち出すことに成功したものの、その後翔に姿を見られてしまいます。
驚いた彼女は角砂糖をそのまま残し、慌てて床下へ帰ったアリエッティが家族にそのことを話します。
父のポッドと母のミホリーは引っ越ししようかと考えましたが、もう少し様子を見ることにしました。
一方で翔は角砂糖を彼女に返そうと『忘れ物』と書いたメモと共に通風孔のそばに置きました。
それを見つけたアリエッティは翔に会いに行くことに。
翔に「もう小人に関わらないでほしい」と話していたとき、窓からカラスが襲いかかってきました。
使用人のハルが追い払ってくれましたが、翔の行動を怪しんだハルはその昔、話に聞いていた小人が屋敷にいるのではないかと疑いはじめます。
ドールハウスのキッチン
部屋でドールハウスのキッチンを見つけた翔は、アリエッティたちに贈ろうと考えます。
ポッドは引っ越し場所を探す中、スピラーに出会い他にも仲間がいることを知りました。
アリエッティ一家の引っ越し
引っ越しの決意を固めた一家だけれど、そのとき家が大きく揺れ、キッチンが剥がし取られます。
代わりに前よりも立派なドールハウスのキッチンが置かれましたが、家を壊された一家の引っ越しは確実なものになりました。
アリエッティは翔にキッチンのことがきっかけで引っ越すことになったと伝えます。
翔は悪態をついたものの、我に返り家を壊したことを謝罪。
そして「死ぬのは僕のほうだ」とアリエッティに胸の内を告白するのでした。
その頃、一家の家を見つけた使用人のハルはミホリーを誘拐。
アリエッティは翔と協力し、台所にいたミホリーを見つけ救出します。
その夜、アリエッティは引っ越しの準備をしスピラーの待つ川へと向かいました。
飼い猫のニーヤに誘導され川にたどり着いた翔はアリエッティと別れの挨拶を交わします。
翔はアリエッティと出会えたことで生きる希望を持てたと述べ、彼女見送るのでした。
『借りぐらしのアリエッティ』における翔の役割とは?
これまでのジブリでは欠落を抱えているのはヒロインの方でした。
前作の『崖の上のポニョ』では、魚のヒロインポニョの行動により世界が破滅へ向かってしまうといういわゆるセカイ系です。
『ハウルの動く城』でも呪いをかけられたのはヒロインであるソフィーの方。
呪いの原因はハウルにありましたが、ソフィーの場合はそもそも小さな帽子屋を営む地味な少女として描かれており、彼女自身に自信をつけることが物語の大きな目的となっています。
アリエッティの場合、彼女自身に欠落と呼べるものはない
翔にキッチンを破壊されて、初めて引っ越しという壁にぶちあったたくらいです。
一方で翔は?
彼は手術のために田舎の屋敷で療養し、生きる希望を無くしていたのです。
「君たちは滅びゆく種族なんだよ」と当たってしまうほどに。
この言葉には幸せな家族をもつアリエッティへの嫉妬心も含まれているのだと思います。
まるでアリエッティが独りぼっちになるのを望んでいるようにも捉えられますね。
しかしその後すぐに死を覚悟する翔から、アリエッティの方が逆に学びを得ているようにも見えました。
このセリフには、翔の不安と嫉妬、様々な想いが入り混じっています。
翔を救ったのが懸命に生きるアリエッティの存在
翔のような存在がいたからこそ、アリエッティのたくましさや優しさといった部分が視聴者にダイレクトに感じられたのでしょう。
『借りぐらしのアリエッティ』Twitter口コミ
まとめ
少年がヒロインの少女に救われるという展開に物足りなさを感じる方もいるでしょう。
しかし、女性の精神的な強さに助けられるという構想は非常に現代的であり、長い歴史をもつスタジオジブリにも新しい風を巻き起こしたのではないでしょうか?
comment