これまで私が観てきた映画は様々ありますが、もしも誰かに語りたい作品を挙げるとするならそれは「ワンピース・ザ・ムービーオマツリ男爵と秘密の島」です。
大人気漫画「ワンピース」を原作にしたアニメ映画
その第6作品目に当たる今作は2005年3月5日に公開されました。
しかし私がこの映画を知ったのは10年以上先、もとい2019年です。
「どうしてそれまで知らなかったのか」と言えば「ワンピース」のファンではなかったため、この作品の存在自体気づいてなかったのです。
今作を知ったきっかけは友人から紹介されたから
その友人は自分と同じく「ワンピース」のファンではなかったので不思議に思っていたものの、話を聞けば自分たちが好きな作家である伊藤計劃さんのコメントで今作が登場していたからだそう。
伊藤計劃さんとは2009年に夭折してしまった作家で、彼が執筆した「虐殺器官」や「ハーモニー」、そして「屍者の帝国」などの物語は魅力的で大好きになりました。
そんな伊藤計劃さんがコメントを残し、さらに友人から教えてもらったその言葉が気になってDVDをレンタルして観る事にしたのですが、そう決めてから見るまでの間、少々時間がかかったので今作を調べてみて驚いたものです。
「ワンピースらしくない」、「酷い」、「このキャラはこんなこと言わない」
一瞬「大丈夫だろうか」と不安に思ったものの、「時をかける少女」で有名な細谷守監督がメガホンを取っていたので好奇心に駆られて結局視聴しました。
そして後日、「オマツリ男爵と秘密の島」のDVDを購入して友人の笑いを誘ってしまったのは記憶に新しいです。
しかし私にとって「オマツリ男爵と秘密の島」はいつでも観ていたい作品である事に変わりはありません。
その理由はやはりオマツリ男爵ことレッドアローズ海賊団の船長、そして秘密の島の事態の元凶であるリリーカーネーションです。
この辺りも観るきっかけになった伊藤計劃さんも言及していますが、あえて自分なりに語っていこうと思います。
そのためネタバレが多々ありますが、ご容赦ください。
ワンピースに興味がなかった私が「オマツリ男爵と秘密の島」を観ることになったきっかけ【ネタバレ】あり
ひとまず「オマツリ男爵と秘密の島」について簡単に説明しましょう。
「オマツリ男爵と秘密の島」あらすじ
物語の冒頭は雨音が激しい海原から始まりますが、一転して平和な麦わら一味に移ります。
彼ら彼女らが船上で交わす話題は拾ったボトルに入っていた手紙とある島への永久指針、そして地図でした。
賛否両論あったものの、結局ある島ことオマツリ島に向かう事にした麦わら一味はそこで頭に葉っぱを生やした沢山の人間たちと彼らを率いる「オマツリ男爵」と名乗る島の施設のオーナーが歓迎します。
しかしオマツリ男爵は麦わら一味を「もてなす」と言いながら、アトラクションじみた試練を次々とぶつけるばかりです。
当初は力を合わせていた麦わら一味もその試練のトラップに騙されたりしていくうちに、いがみあうようになっていきます。そんな中、ロビンとチョッパーはそれぞれ島の秘密の一端を掴むのでした。
以上が簡単なあらすじですが、これからいよいよ本格的にネタバレしていきます。
ロビンが島の秘密を掴むきっかけとなったのはオマツリ男爵の肩に乗っていた可愛らしい花です。
その花の名はリリーカーネーション、オマツリ島の固有種とされていますがそんな生易しい花ではありません。
むしろ花のような悪魔です。
ここで少々話が前後してしまいますが、オマツリ男爵は元海賊で、それはそれは大きな海賊団の船長でした。
しかし彼らは嵐に巻き込まれたせいで船長だけを残し、死んでしまいます。
たどり着いた島で生き延びた船長は皆を弔い、本来であればそこで悲しみに暮れながらも新しい生活をしていたのでしょうが、その島にあったリリーカーネーションが物語を始めてしまいました。
リリーカーネーションは別名「死と再生の花」
すなわち死んだ人間を復活もといコピーできるのです。
復活した人間は頭に葉っぱが生え、剣で斬られたとしても無傷でいられますが、定期的にある事をしなければその人間は栄養を失って枯れていく植物のように倒れてしまいます。
定期的にしなければならない事、それはリリーカーネーションに人間を食べさせる事です。
それがオマツリ男爵と島の秘密です。
作中この事が断言される事はなかったものの、いつも今作を思い出すとあるシーンが脳裏に蘇ります。
それは仲間をリリーカーネーションに食べられてしまい、それでも取り戻そうとするルフィの一撃が届いた後のシーンです。
幹に入った一撃によって倒れるかと思いきや、空が真っ赤になり、破片が無数の矢になってルフィに注がれていきます。
その様を見ていた男爵は件の嵐の日を思い出し、その日の雨と降り注ぐ矢の音が重なって彼はこう言います。
「仲間を失った気分が分かったか?」
運が良い事に自分はオマツリ男爵のように心が狂うほどに失って悲しいほどの人間との別離をまだ体験していません。
しかし「もしも仲間を失うとしたらこんな気分なんだろうな」と今作で教えられました。
あとで調べましたが、今作を担当した細谷守監督の「ハウルの動く城」制作時のスタッフを失った事とその絶望、そして絶望しているところに新しい仲間が来てくれた経験を活かしているそうです。
だからなのでしょうか、オマツリ男爵のあの一言に血の温かさを感じたのは。
しかし仲間に関してはオマツリ男爵だけではなく、忘れてはいけない人物が・・・。
チョビヒゲ海賊団のブリーフ船長で、「チョビヒゲ」という掛け声とチョビヒゲがチャームポイントの彼はオマツリ男爵に仲間を奪われてしまいました。
- 仲間と共に食べられる
- 1人生き残る
大抵は孤独と悲しみのあまり前者を選びますが、ブリーフはそれらに耐えて後者を選びます。
そうして物語が始まるまで孤立奮闘していたのです。
オマツリ男爵とブリーフ、2人の立場は全く異なりますが仲間を失う悲しみは共通していたように思えます。
今作は暗い部分がフォーカスされていますが、だからこそ多くの人に観てほしい。
ちなみに元凶であるリリーカーネーションの由来はリィンカーネーション、すなわち輪廻転生らしいですよ。
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