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映画「さようなら」あらすじと感想

さようなら

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「さようなら」は、第28回の東京国際映画祭のコンペティション部門でプレミアム上映されているSFアドベンチャー。

2015年11月21日〜ファントム・フイルム社の配給で、新宿武蔵野館を封切りに全国ロードショーされました。

フランスの文豪・バルザックの古典的名作をアートアニメーションによって現代に甦らせた「ざくろ屋敷」や、とあるホテルを舞台にして幼い頃に離れ離れになった男女の再会と悲喜こもごもを暴き出していく「ジェファソンの東」など。

舞台劇の実写映画化からシチュエーション・コメディーまでを幅広く手掛けている、深田晃司監督がメガホンを取っています。

第18回の菊島隆三賞ノミネート他、マドリッド国際映画祭ではディアス・デ・シネ最優秀作品を獲得しています。

原子力発電所の事故によって見捨てられた近未来の日本で、アンドロイドと最期の時を迎える女性を主人公にした衝撃作に仕上がっています。

目次

「さようなら」あらすじ

放射能で避難を余儀なくされた状況

ある日突然に発生した原発事故によって日本列島全体の放射能レベルが上がったために、政府は優先順位に従って国民を海外へ避難させていました。

難民認定を受けてこの国で暮らしていたターニャには、事故から5カ月以上経過してからも避難先は決まりません。

ターニャをサポートするアンドロイドのレオナ

ターニャとレオナ

幼い頃から身体が弱い彼女をサポートするのは、今は亡き父親が大金をはたいて買ってくれたアンドロイドのレオナです。

足のパーツが故障しているために車椅子での移動しかできませんが、買い物や近所の人への伝言などはまだまだこなせます。

佐野やサトシの存在

引きこもりがちなターニャのことを心配して訪ねてきてくれる友人の佐野、静岡県の実家に行ったまま帰ってこない恋人のサトシ。

周りの人たちとレオナに助けられながら僅かな可能性を信じていたターニャに、残酷な現実が突き付けられることになるのでした。

「さようなら」キャスト

ブライアリー・ロング

ブライアリー・ロング

ヒロインのターニャを演じているのは、アメリカ・ヴァージニア州出身の女優さんブライアリー・ロングです。

イギリスの名門・オックスフォード大学に留学して日本文学を学んだ後に、劇作家の平田オリザが旗揚げした「青年団」に加入したという異色の経歴ですね。

深田監督とは2011年作「歓待」でもタッグを組んでいて、前作でのミステリアスな美女から今作はマイノリティーの苦悩を体現した難しい役どころに挑戦していました。

村田牧子

孤独なターニャの数少ないお友だちの佐野役には、舞台役者やワークショップで活躍している村田牧子がキャスティングされています。

村上虹郎、木引優子

ターニャたちとつかの間の交流を深めていく若いカップル役に扮している、村上虹郎や木引優子も存在感バッチリです。

イレーヌ・ジャコブ

テオ・アンゲプロスやクシシュトフ・キシェロフスキ監督を始めとする名匠から愛されたベテラン女優、イレーヌ・ジャコブが意外な場面でゲスト出演しているのも見逃せません。

「さようなら」感想

日本中がパニック

真っ暗闇の中を旋回するヘリコプターのホバリング音と、遥か沿岸で静かに燃え盛る街並みがオープニングを飾ります。

海外のニュース番組の速報では「LAST DAY OF JAPAN」というテロップが画面上に表示されていて、ものものしい雰囲気ですよ。

都会の道路は家族を乗せて逃げ出そうとする自家用車で一面が埋め尽くされていて、空港へ歩いて向かう人たちまでいてパニック状態です。

パニックを他所に悠然と構えるターニャ

ターニャとレオナ

そんな大騒ぎの様子をソファに寝そべりながらテレビで眺めているのがターニャで、まるっきり緊迫感がありません。

窓越しには午後の陽射しでススキの穂が煌めいて、微かに揺らめくカーテンの傍らにはクラシックカーの模型が置いてありました。

滅びゆく世界の中に取り残されながらも、すべてを受け入れるかのような彼女の眼差しが美しさに満ちています。

この映画のタイトル「さようなら」とは、「二十億光年の孤独」や「世間知ラズ」など数多くの名作を発表し続けている谷川俊太郎の詩の1節から取ったものです。

非情なシステム

久しぶりに自転車に乗ってターニャが外出するシーンでは、「とおく」という作品のフレーズがバックに流れていました。

「われ 非情の河より河を下りしが」という言葉は、夭折の詩人アルチュール・ランボーの「酩酊船」から引用されています。

海の向こうへの避難の順番待ちを続けているターニャにとっては、国家権力によって国民の生命に優先順位が設定されるシステムこそが「非情」なのかもしれません。

まるで人間のようなレオナ

レオナと車椅子

すっかり気分が落ち込んでしまったターニャを励ますために、レオナが贈った言葉は「ああ、われ、人と止め行きて」です。

カール・ブッセの「山のあなた」の中に登場する有名な詩です。
上田敏の「海潮音」や国語の教科書で馴染みがありますよね。

レオナ役はジェミノイドFですが、もちろん人間の役者ではなく工学博士の石黒浩教授によって開発された最新バージョンのアンドロイドです。

プログラミングされたセリフを喋るばかりではなく、すばやい受け答えや微妙にワンテンポを置くことも可能で会話に違和感がありません。

ターニャが気に入っているランボーの詩を暗唱したり、フランス語に翻訳することもできるほどのハイスペックを備えています。

ターニャの家にサトシが遊びに来た時には、空気を読んでそっと席を外したりと喜怒哀楽が芽生えているかのようでした。

[moveline color=”#afeeee” sec=”5″ thick=”40″ away=”2″]本作品での「名演技」が評価されて、[move]東京国際映画祭では最優秀女優賞にまでノミネート[/move]されたというエピソードには驚きでしょう。[/moveline]

惜しくも受賞には至らなかったものの、AIを搭載した2足歩行型ロボットが映画やテレビで活躍する日が本格的に近づいているのかもしれません。

まとめ

心から信頼していた友は自らの生命を絶って、愛していたたったひとりの男性は遠いところにいってしまって。

すべてを失った挙げ句に緊急避難委員会からも見捨てられて、あとは静かに死を待つだけとなったターニャの姿が痛々しいです。

いつかは滅びゆく人間の肉体的な儚さと、いつの時代にも変わることのない空の美しさと大地の雄大さとのコントラストが際立っています。

絶望的な未来を予測して描いたディストピア・ムービーでありながら、クライマックスでは次の世代への希望も噛みしめることができました。

演劇鑑賞がお好きな皆さんだけでなく、ロボット工学に興味がある方たちも是非みて下さい。

さようなら

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