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「トランセンデンス」あらすじと感想

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「トランセンデンス(Transcendence:超越)」は、2014年公開のイギリス・中国・アメリカで製作されたSF・サスペンス映画です。

主演は、ジョニー・デップ、レベッカ・ホール。

科学者役のジョニー・デップは、これまでの作品で多かったアクションや変わったメイク、コスチューム、コメディのない、セリフメインの出演となっています。

高度化した科学技術によるAIと生命の融合と進化がもたらす危機という、深淵なテーマを扱っていることから、宗教的、倫理的な観点からの批判や抵抗感を持たれたためか、優秀な撮影監督ウォーリー・フィスターの映画監督デビュー作となりながら脚本が活かしきれていない、という批評を受けた作品です。

しかしながら、ヒロイン演じるイギリス人女優レベッカ・ホールの熱演や、独特の映像やムードにより、余韻を残す出来栄えとなっています。

目次

「トランセンデンス」のあらすじ

トランセンデンス

科学者ウィルは、妻エヴリンと共に人類に代わる自我を持つ人工頭脳PINNの研究・開発を行っていました。

けれども、反テクノロジーの過激派テロ集団により、ウィルはその凶弾に仕込まれた有害物質による中毒で数週間後に命を落とします。

エヴリンは、愛するウィルの記憶と意識をデータ化してPINNにアップロードし、人工頭脳として蘇らすことに成功します。
PINNと融合したウィルは、軍事機密や経済、個人情報まで吸収、進化を遂げました。

二人は、錆びれた町に地下施設を建造すると、2年後には不治の病やケガを瞬時に治療・再生する機械を開発、多くの人々が訪れるようになります。

ところが、治療された人間は肉体を勝手に増強され、ウィルの意識とリンクし操られてしまうことがわかり、私設軍隊と認識したFBIからも攻撃の対象となり、破壊ウィルスがアップロードされ両者の激化する戦いの中、エヴリンが致命傷を負ってしまいます。

「トランセンデンス」のみどころ

みどころ1:科学者役のジョニー・デップ

これまで、派手目のアクションや個性的なメイクやコスチューム、コメディな作品への出演が目立つジョニー・デップが、科学者役としてシリアスな役で登場しており、珍しい印象です。

生きている人間としては冒頭と結末のみで、あとはAIにアップロードされたウィルの記憶と意識という形で、ほとんどはモニターに写っている上半身の姿です。

エヴリンを愛していた記憶からなのか、エヴリンが研究で目指していた目標であるエコシステムな世界を達成するべく動いていきます。

愛しているエヴリンに触りたいゆえに、治療をしてリンクした男性を通じて触れようとすると気味悪がられて拒絶され、ついにはウィル自身の体を再生してしまったPINNには、果たして本当の「自我」が存在するのかどうかについて、どう思うかは視聴者にゆだねられています。

結末の印象は、ジョニー・デップならではの世界観が漂う映像です。

みどころ2:AIと人間の融合という深淵なるテーマ

人間の脳をコンピュータにアップロードしている所これまで、科学や生物学の禁忌とされていた神の領域ともいえる命の問題に、現実でもペットのクローン化として踏み込み始めています。

これ以前にも人間の脳を機械につなぐ永遠の生命や、超越した存在というストーリーは多くありましたが、「トランセンデンス」は、脳の情報を人工頭脳にデータとして移植してしまうという、新鮮かつ実際にありそうなストーリーです。

そこに、元の人間としての自我があるのかないのかが、問われています。

マシーンとしての愛情表現というプログラムなのか、ウィルという人間としての愛情からの行為なのか。

ありそうな話ながら着眼点は面白く、凶悪なテロ集団が正義に見えてしまうストーリー展開も見事です。

AIの超越ゆえの治療法によって、いかなる難病も怪我も一瞬にして治療可能になりながら、結局は助けられた人たちはゾンビのように操られるものになってしまうという恐怖感など、なかなか興味深い脚本です。

みどころ3:かなりの熱演ヒロイン役のレベッカ・ホール

レベッカ・ホールこの映画の主演で目玉であるはずのジョニー・デップは、役柄上無表情的でセリフのみで物足りなさを感じるのに対し、ヒロイン、エヴリン役のレベッカ・ホールがかなりの熱演で胸に迫ります。

物語序盤から、ウィルが早朝に息絶えていることに気付き泣き崩れるシーンは、感情表現の演技が真に迫っており、胸に迫るものがあります。

終始エヴリンのウィルを愛する心を切なく強く、生き生きと演じきっており、無機質なになりがちな科学もののストーリーをヒューマンなものにしています。

華奢な感じで、物凄く美人というわけでもないのですが、AI化したウィルとの愛と目標を応援したくなります。

「トランセンデンス」の感想

残念でもジョニー・デップ

病室に横たわるウィル「トランセンデンス」の脚本は評価されていますが、映画作品としては批評は芳しくありません。

その理由の大きな一因は、主演の一人でもあるジョニー・デップが、ジョニー・デップでなくても良いような役を演じているため、もったいないというかつまらないというか、多くのファンにとって残念に感じるからでははないかと思います。

逆に、当たり役だった海賊の役が不潔っぽくて、コミカル過ぎると思える人には、割と興味深く思える作品です。

ギャラが高すぎてセリフメインの別撮りされたのかと思えるほど、ジョニー・デップの良い所が少なく感じる作品でしたが、どんなに残念でも、ジョニー・デップ!

ラストは、流石にジョニー・デップの世界が感じられる余韻が残るものとなっています。

面白い脚本

進化か退化か「トランセンデンス」のストーリーは、映像ではなく文章で追っていくと、実によくできた脚本であることがわかります。

映像も、冒頭、反テクノロジー集団のテロリストが研究施設内に潜入して潜伏、モーガン・フリーマン演じる科学者の上司に、ダイオキシン入りのチョコレートケーキをティータイムに盛り、ウィルは撃たれてもあらかじめ銃撃に備えておりかすり傷でホッと安心したのもつかの間、弾丸に有害物質を塗布されており、時間をかけて中毒死という展開、ドキドキさせられます。

どんな凄い話になるだろうと期待して見ていると、中盤から終盤にかけてはバイオハザードな光景とゾンビ、ラストはジョニー・デップの世界で終わり、ちょっともったいないです。

人間の意識をアップロードし、進化したAIが難病を瞬時に治したり、治療した体を増強してしまうなど、発想はかなり興味深いです。

不思議と余韻が残る作品

人類が終わりを迎えてしまうジョニー・デップらしさを演出すると、独特の余韻のある作品になることがこの作品でもよくわかります。

冒頭と結末は、AIによって管理されていた電力がシャットダウンし、文明が荒廃した世界が描かれていますが、ウィルとエヴリンの共通の友人である科学者が、今は亡き夫婦の自宅へと向かうシーンでつながるようになっています。

エヴリンを愛し、ウィルから後を頼まれたのに叶わなかった損な役まわりの友人は、独り言のように、何か意味があるはずだとつぶやきながら庭に入っていくと、かすかな二人の名残であるエコシステムにたどり着きます。

最先端な科学の暴走とそれに反応する大げさな危機感を描いた作品だっただけに、話が終わると何だったんだろう感はあります。

最後の小さな荒れた庭の中に存続するエコシステムで咲くひまわりの花の映像を見て、それって、悲恋がかった永遠の愛がテーマ!?という結論に至り、長い余韻を感じてしまうことになります。

まとめ

「トランセンデンス」は、ジョニー・デップが好きな人なら、作品の良し悪しに関係なく見ておくのは良いと思います。
作品中に出てくる“何か意味のある”が何を意味するのかは人それぞれかもです。

監督を調べると、撮影スタッフとして参加した初期の作品に「インソムニア」があります。

アルパチーノが、当時無名に近かったクリストファー・ノーラン監督に逆オファーをして制作側を驚かせ、主役を演じた作品です。

やはり脚本が良くて、地味ながら印象に残る作品、その後監督はアカデミー賞に名前をつらねるほどとなり、先見の目があったと言われています。

「トランセンデンス」は、そのようなつながりを持った作品でもあります。

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