絵画好きなら、特に楽しめるでしょう。
[moveline color=”#afeeee” sec=”5″ thick=”40″ away=”2″]こちらは[move]「フェルメール展」とタイアップした記念映画[/move]であり、展覧会で観た額縁の中からそのまま出てきたような人たちの物語を垣間見ることができます。[/moveline]
もしくは、自分が額縁の中に入ってタイムスリップしたかのような錯覚を覚えました。中世オランダの文化や大迫力ある航海で繰り広げられる貿易の舞台、そこでの民衆の暮らしや人々の様子が映画の中からわかります。
一大の繁栄を築いた時代とは言え、身寄りのない者にとっては貧しいことに変わりはなく・・・。
そのソフィアが本能のままに恋をしたとき、狂わしいほどの情熱をみて「フェルメール」の恋のもつれを忠実に表しているかのように ままならない現実を過ごしている現代人にもどこか通じるものがありました。
そんな背景を前に、登場人物たちの織りなす恋愛模様。
こちらの作品のみどころを交えつつ、感想を書いていきます。
デボラ・モガーの「チューリップ・フィーバー」を映像化
物語の舞台はスペインから独立して繁栄を極めた「黄金時代」といわれたオランダ・アムステルダムです。
好景気の最中、人々が熱中したものは〝絵画″と〝チューリップ″。
財を成すものは肖像画をこぞって画家に描かせており、チューリップは希少なものだと球根ひとつが邸宅一軒分に相当します。
まさにチューリップ・フィーバーを巻き起こしていたバブルの時代でした。
「チューリップ・フィーバー」の見どころ
みどころ①(時代背景からの恋愛事情)
ソフィアは修道院の経済的援助をするコルネリウスの元に若くして嫁ぎます。
恋愛を知らないまま恩義を感じて小作りに励むという今の時代からは考えられない背景です。
- 若く貧しい女性は生活の安定のために年老いた金持ちと結婚する
- 金持ちも健康な後継ぎを生んでくれる若い彼女に満足する
- 夫が財を遺して死ぬと金持ちの未亡人は若い男と結婚する
ソフィアの辛さのなかで、一矢報いるように小作りに励むも上手くいかず夫を騙すはめになったのも期待を壊したくないというある種の真面目さから来ているかもしれません。
しかし、本能は逆らえず愛したヤンとの営みはとても情熱的に映像化されていて目を見張るものがあります。
みどころ②(人々が熱狂したチューリップ投機)
日本もバブルを経験しましたが、好景気のオランダでは土地投機やくじのようなものにも盛んでしたが突如湧いたチューリップへの情熱が燃え盛ります。
チューリップは種類が多く安いものなら庶民でも買えました。
転売を繰り返して値が上がっていくために貧乏人が一夜にして大金を稼ぐという構図が成り立ちます。
チューリップの中でも特に高値がつくのが希少な縦模様のチューリップです。
それを人々は〝ブレイカー″色割れと呼び、神々しく扱われていました。
作品中、このブレイカーが登場人物の運命を狂わせることになるのですが、熱狂的な事象は崩れることもあり、危険をはらんでいることはこの国で実証済みです。
また、作品中にも出てきますが売買される対象は球根だったために、玉ねぎと間違えて食べられてしまうことも多々あったようです。
監督は、ジャスティン・チャドウィック
「チューリップ・フィーバー」は、「ブーリン家の姉妹」の監督として有名なジャスティン・チャドウィック。
こちらの作品も素晴らしかったために期待を込めて観ました。
フェルメールの肖像画から抜き出てきたような景色・登場人物たちの圧倒的な迫力!
主人公ソフィアが肖像のモデルになった衣装は素晴らしく、高貴な青を身に纏った出で立ちはソフィアそのものの高潔さを表していました。
人々が投機の欲望に熱中したように、こちらの恋愛模様も激しく、欲望に身をまかせていて終始その欲望が危険をはらんでいるような怖さが映像にはありました。
裏切りをしてどのような結果になるのかわからないハラハラした心理ミステリーみたいなものを味わいました。
ソフィアの若くして子作りに励むシーンは観ていても悲しいものがありましたし、対比で女中のマリアが青春を謳歌しているシーンもソフィアの心中を図ると切ないものがあります。
官能的なシーンも多く、そこが魅せ場だとわかりつつも、激しく海外で予告中止になったのも頷ける気がしました。
ただ、そのシーンがないとあの鬼気迫るような迫力が出ないでしょうし、時代的な背景やソフィアの悲しさが浮かばれないので日本で上映禁止にならずに済んで良かったです。
フェルメールとのコラボについて
現代ではよく知られている画家ですが、生前はそうでもなく。
残っている作品はとっても少ないです。
原作者のデボラ・モガーによると、フェルメールにインスパイアを受けて小説を描いたその各作品の描写は見事で この描写をジャスティン・チャドウィック監督が映像化に成功させています。
映画の中に作品ごとの映像シーンに着目して観ると新たな発見があり、絵を一層味わえるでしょう。
一枚の肖像画はドラマを物語り、ひとの琴線に触れることもありますが、映画作品ならではの情感やリアルな質感なども味わえるのが映画の醍醐味です。
都内で世界でも有数の美術館で著名な展覧会が催されているなか、いまは展覧会とタイアップしている映画作品やレストラン、ミュージアムショップと関連して様々に作品を味わえるようになっています。
その一環で楽しんで観た「チューリップ・フィーバー」でしたが心に残った作品として こちらに綴らさせて頂きます。
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