奇想天外、ケレン味たっぷりのアクションでインドのみならず全世界を熱狂させた前作から約2年。
前作のラストで、驚愕のクリフハンガーを残し、観客はこの2年間、本作の公開をどれだけ待ちわびたことだろうか。
本国インドでも異例のロングラン上映、日本でも応援上映や爆音上映、果ては一緒に歌って踊るマサラ上映なるものまで登場したのだから、本作が与えた衝撃の強さが窺える。
なお現時点でも度々応援上映などが開催されます。
その都度満席になっているそう。
日本で大ヒットとなった「カメラを止めるな」や「この世界の片隅に」と同様、作品に人気に火がついたことによって、上映館の拡大や、完全版の上映がされた。
(インターナショナル版と呼ばれる、歌とダンスのシーンを一部カットしたものが当初上映されていたが、日本での大熱狂により、インド本国で上映された完全版も上映される運びとなった。)
「バーフバリ王の凱旋」ストーリーを簡単に説明
古代インドに栄えたマヒシュマティ王国を舞台とした貴種流離譚である。
マヒシュマティ王国の王族、アマレンドラ・バーフバリ(以下父バーフバリ)と子であるマヘンドラ・バーフバリ(子バーフバリ)の2人の主人公、2つの時間軸で構成されている。
前作の超かんたんなあらすじ
滝の上から川下の村に流れてきた赤子のマヘンドラ・バーフバリ。
彼が成長し、恋に落ちたアヴァンティカを助ける過程で、父の側近であり、武術の師でもあるカッタッパより自身の王子としての血筋と亡き父の悲劇、そしてバーフバリの血をつぐ宿命を教えられるといったものである。
本作では父バーフバリが次期国王として国母シヴァガミから指名を受けたところから始まる
国王就任までに周辺国を周り見聞を広める父バーフバリと側近カッタッパ。
バーフバリは旅の最中に隣国のクンタラで出会った運命の女性デーヴァセーナを妻に迎える。
しかし王位争いに1度は敗れた義兄弟バラーラデーヴァによる姑息な謀略により、バーフバリは国王就任目前にして、王座をバラーラデーヴァに譲ることになる。
謀略によりバーフバリは野に下っても尚、その器の大きさで民の人望を一手に集め続け、バーフバリの子を身籠った妻のテーヴァセーナとつつましくも暮らしていた。
それを疎ましく思うバラーラデーヴァは再度策を巡らし、バーフバリの殺害を考えるが…
わたしが「バーフバリ」を鑑賞した理由
今作「王の凱旋」の公開1週間前に、予告編のほんのわずかな1シーンが切り取られtwitterで流れてきたものを見たからだった。
そのわずか1シーン、時間にして5秒前後くらいであろうか、そのたった数秒で度胆を抜かれたのだ。
兵隊達が盾を持って、大きくしなったヤシの木に乗っかると、そのしなりを利用し、城壁を飛び越え、空中で盾をひっつけて円筒状になる。

「なんだこのアクションは?!こんなムチャクチャなこと、あるかい!!」
まんまとそのシーンに乗せられて、前作「伝説誕生」をツッコむ気満々で鑑賞した。
すると、どうだろう。
もちろんツッコみどころは多数あるが、、、なんだこの熱狂感は?
ケレン味あふれるアクションの、この荒唐無稽さを支える説得力はなんだ?
キャラクター一人一人のほっといても物語が動き出していきそうなこのグルーヴ感はなんだ?
見終わった時、私は涙と共に、衝撃に包まれていた。
早く続きが見たい。
前述の通り、前作より2年の期間を空けて本作は公開された。
わたしが待ったのは、たったの1週間だ。
それでも、とてつもなく長く感じたのだから、2年待ったファンは本当に心待ちにしたことでしょう。
さて前置きが長くなったが・・・
本作が映画としてどうだったか?
前作の衝撃、感動、アクション、ストーリー性など、全てにおいて上回り、とてつもない快作だった。
映画冒頭から、とばしまくり。
巨大な山車のようなものを曳いた父バーフバリが、暴れ象を蹴散らし、母を救出すると、その象に巨大な弓を持たせて、バーフバリが弦を引き、火のついた矢を射る。



その他にも、大量の暴れ牛の角に火をつけ、その頭にのって敵を攻めたりなど、動物愛護団体からは確実に訴えられるような荒唐無稽。
しかし、それがなぜか必然に感じさせるアクションが続く。
と思えば、妻になるテーヴァセーナと協力して狭い廊下で多数の敵を弓で次々と倒していくシーンは、アクションとしてのクオリティが素晴らしく、間違いなく本作の中でも最高のシーンのひとつだ。
アクションの魅力もさることながら、その荒唐無稽にも思えるアクションを、根底で支えるのは、どっしりとしたストーリーである。
インドの神話である「マハーバーラタ」を下敷きにしたストーリー
世界共通である親子、兄弟、師弟関係の中にある愛や憎しみ。
善と悪。
そして一人一人のキャラクター。
監督は、役者一人一人に演じるキャラクターに対して、このキャラクターは、どんなカレーを食べて育ったか?
このキャラクターは、ある状況でどういう行動をするか?
そういった質問と答えを細かい所まで大量に用意して与えていたそうだ。
もちろんそのキャラクターが、映画として切り取られるのは、そのほんの一部分だ。
そういった普遍的な大河ドラマと練り込まれたキャラクターがあるからこそ、神話のストーリーで山を動かしたとか、海を割ったとかそういった事が当たり前に語られるのと同じように、いくらアクションが荒唐無稽に見えても、妙に説得力のあるものに思えるのだ。
まとめ
最後になるが、インド映画と言うと、「脈絡なく急に歌って踊って、わけわからん。」そんな声もあるだろう。
そう思う人程ぜひ本作を見てほしい。
歌とダンスがストーリーの補足として、心理描写に深みを加えるようになっており、そのようなものを見ると、文字通り「心躍る」体験となって、映画に更なるスパイスを加えてくれる。
監督はS・S・ラージャマウリ。
今作の他には、ハエに転生した主人公の物語「マッキー」や、バーフバリの要素を感じさせながら古代と現代劇を合わせた「マガディーラ勇者転生」など。
主演の父と子バーフバリの一人二役を演じきった、プラバース。
身長190cmを超える巨体に甘いマスク、抜群のスタイルとアクション力、しかしシャイでなかなかメディアでは話さないという側面もギャップがあり可愛らしいですね。
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