物語の中で湯婆婆が
「まったくつまらない誓いを立てちまったもんだよ。働きたい者には仕事をやるだなんて……」
と嘆くシーンがありますよね。
これは千尋と契約した後の言葉ですが、湯婆婆は「小娘に何が出来る」と千尋を罵倒しており、もともと雇う気がなかったように見えますね。
だから湯婆婆は精神的に千尋を追い詰めて「帰りたい」と言わせようとしてたのですね。
ハクも湯婆婆について「嫌だとか、帰りたいとか言わせるように仕向けてくるけど、働きたいとだけ言うんだ。辛くても、耐えて機会を待つんだよ」
と助言しています。
この誓いは経営者である湯婆婆にとっては不利な条件でしかありません。
どんなに役に立たない人材でも「働きたい」という意思があれば雇わざるおえないのです。
それでもなおこの誓いを立てたということは、湯婆婆は面倒な誓いと引き換えに重要な何かを得ているのだと考えられます。
湯婆婆の双子の姉、銭婆
湯婆婆は宝石やお金に価値を見出し、魔法で華美な暮らしをしてます。
一方、銭婆は田舎の小さな家で全てを魔法に頼ることなく質素な生活を営んでいます。
銭婆が「気が合わなくてね」と言っていたように、2人の性格は正反対であることが伺えます。
湯婆婆と銭婆はどうやって魔法の力を得たの?
朝から宮崎さんと鈴木さんが定例打ち合わせ。今朝はいつもより長く、制作中の新作や関連事業、世間のニュースに花が咲きました。 pic.twitter.com/AR62BvfzOw
— スタジオジブリ STUDIO GHIBLI (@JP_GHIBLI) February 25, 2021
さて、2人はどちらも力の強い魔法使いですが、果たしてその魔法はどのようにして手に入れたのでしょうか?
最初から力があったのか否か。
ここでキーになるのが、ハクが湯婆婆に仕えている理由です。
釜爺曰く、ハクは「魔法使いになりたい」と言って湯婆婆に弟子入りしたようです。
このことから、「魔法使い」は師匠に術を教わって魔法の力を手に入れると考えられます。
銭婆によると姉妹は「二人で一人前」とのこと。
そうすると、二人は同じ魔法使いに弟子入りしたのかもしれません。
魔法の契約印
物語の後半に『魔女の契約印』というものが登場します。
ハクが銭婆の元から盗んできたハンコですね。
これは姉妹が魔法使いになる契約を結んだ際に使用したハンコだと思われます。
そのときの誓いが恐らく「働きたものには仕事を与える」というものだったのでしょう。
気性の荒い湯婆婆をけん制
経営者として魔法を自由に使えるとなると危険を伴うので、ある程度の制約を設けるためにこのような条件が課せられたのかもしれません。
しかしながら湯婆婆は人情深い一面も持ち合わせている人物です。
腐れ神の接待に成功した千尋を抱きしめ皆に彼女を見習うよう声をかけたり、カオナシが暴走した際は従業員を守るため身を挺して戦ったりしています。
千尋に様々な試練を与えながらも仕事の厳しさを教え成長を促しているようにも。
経営者としては立派ですね。
湯婆婆は名を奪って人を支配します。
それが湯婆婆と従業員との間になされる契約です。
契約が解かれる条件はなあに?
作中で語られることはありませんが、名前を思い出せば帰ることができると言うのは確かなようです。
ハクと千尋の共通点
条件の本質が見えてきませんか??
千尋は引っ越しで友人たちと別れ、道中でこの世界へ。
ハクは川の神様でしたが埋め立てで行き場を失い、彷徨っていたのでしょう。
2人とも『自分の居場所を失った存在』
「名前」は、自身の存在を証明する1番のアイデンティティですよね。
それを奪うことで自分が何者なのかが本当にわからなくなる。
ただでさえ居場所を見失っている人間には酷なことですが、もう一度名前を思い出したとき……。
それは自身を見つけることができたときでしょう。
自分を見失わなかった千尋も、名前を思い出したハクもこうして契約から解放されたのではないでしょうか。
異質なカオナシのキャラ設定
「呑まれる」
みずほ銀行のATMはカオナシみたいだったのかな。 pic.twitter.com/r4WPDEogPe— とっぴー🚗S660💕お天気は穂川果音さん💕 (@TT_toppy) February 28, 2021
登場人物の中でも特に異質なカオナシというキャラがいますね。
宮崎駿監督はカオナシについて「誰の心の中にもいる」
と語っており、ネット上では現代の若者を象徴してるのではとの憶測も出てきてます。
カオナシは行くところも帰るところもなく「あ……あ……」としかしゃべることができません。
コミュニケーション能力に欠けていて意思を相手に伝えられないカオナシの姿は、自分の居場所を見失ってしまった人間の成れの果てなのではないでしょうか。
まとめ
千尋やハクのように露頭に迷ったヒトは、湯婆婆に仕事を与えられたことで自身の道を切り開いていきました。
「働きたいものには仕事を与える」という湯婆婆の誓いは、単に魔法使いになるためだけでなく、カオナシのような自我のない存在を作らないために立てられたものであるとも考えられます。
湯婆婆は一見恐ろしい魔女に見えますが、そういった誓いの真意を汲んでいるのであれば人望に熱く深みのあるキャラクターに思えますね。
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